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年収106万円の壁とは?社会保険適用促進手当導入で何が変わる?

更新日:2023年11月8日



年収106万円の壁は、労働者や社会にとって重要な課題となっています。具体的に言うと、配偶者の扶養範囲内で働く労働者が、年収106万円を超えた場合に必要となる社会保険料などを理由に、働く時間などを調整していることを指します。


そこで、この年収の壁問題の対応策として、2023年10月から「年収の壁・支援強化パッケージ」がスタートすることになりました。


本記事では、年収106万円の壁の概要や、「年収の壁・支援強化パッケージ」について解説します。具体的な対応策である、キャリアアップ助成金や社会保険適用促進手当についても説明しますので、参考にしていただければ幸いです。



年収の壁とは?

会社員や公務員の配偶者で保険料負担がない、国民年金の「第3号被保険者」のうち約40%が働いています。しかし、一定以上の収入(106万円)及び要件※を満たすと、社会保険への加入が必要になり、その保険料負担などにより手取り収入が減少するため、就業調整をする現状にあることを「年収の壁」と呼んでいます。


※厚生年金保険の被保険者数が101名以上(2024年10月以降は51名以上)の事業所の社会保険加入要件

1.週の所定労働時間が20時間以上

2.月額賃金が8万8,000円以上(年収換算約106万円)

3.2ヶ月を超えて雇用される見込みがある

4.学生ではない



第3号被保険者は、会社員や公務員などに扶養される専業主婦や専業主夫を指します。このような方々が、一定の収入を得るためにパートタイムなどで働くことは、現代社会において一般的なことです。しかし、一定以上の収入を得た場合、自分での社会保険加入が必要になり、手取り収入が減少するため、106万円を超えないように労働時間を調整します。


本来は収入を増やしたい労働者と、人手不足で労働力を確保したい企業の、ミスマッチが発生しており以前より問題視されていました。


現在の日本では、超高齢化社会と人口減少による労働力不足が深刻化しており、対策が急務となり、2023年10月から支援策がスタートすることとなりました。




106万円の壁への対応策「年収の壁・支援強化パッケージ」

人手不足への対応が急務となり、短時間労働者が「106万円の壁」を意識せずに働くことができる環境づくりを支援するため、「年収の壁・支援強化パッケージ」として、以下の取り組みがスタートしました。


1)キャリアアップ助成金「社会保険適用時処遇改善コース」を新設

キャリアアップ助成金の「社会保険適用時処遇改善コース」は、労働者の収入を増加させるための取り組みを行った事業主に対して、労働者1人あたり最大50万円の支援を行うものです。


このコースでは、短時間労働者が社会保険に新たに加入する際の負担を補助します。短時間労働者の就労時間が増えることで、企業の生産性向上にも繋がるとされており、このような背景から、キャリアアップ助成金のコース新設が行われています。


要するに、「保険料負担分」の補填や収入アップを行うことで、社会保険に加入しても、収入が減らないような対策を促す助成金となります。


■収入を増加させる取組例

​・賃上げ

・手当(社会保険適用促進手当など)の支給

・所定労働時間の延長など

取組内容によって、「手当等支給メニュー」や「労働時間延⾧メニュー」、「これらの併用メニュー」がありますので、自社にあった方法を検討しましょう。




2)社会保険適用促進手当:社会保険料の算定から除外する優遇措置

事業主が支給した社会保険適用促進手当については、被保険者の標準報酬の算定において除外され、労使双方の保険料負担を軽減することを目的とされています。そのため、社会保険料の算定から除外できるのは、新たに発生した本人負担分の保険料相当額が上限となります。


また、「標準報酬月額・標準賞与額」の15%以上分を追加支給した場合、キャリアアップ助成金の対象となりますので、制度をしっかりと理解して運用すれば、企業の負担も大幅に軽減できます。


これは、労働者と企業の双方にとってメリットのある制度です。労使ともに社会保険料の負担軽減を受けることができ、社会保険の適用を促進することで労働環境の向上や安定的な雇用を図ることができます。


■要件

​①対象者 標準報酬月額が10.4万円以下の労働者 ②社会保険料の算定から除外できる上限額 社会保険加入による本人負担分の保険料相当額 ③対象期間 最大2年間




3)「年収の壁・支援強化パッケージ」活用の流れ

「年収の壁・支援強化パッケージ」の活用方法についてまとめると、以下のようになります。

①新たに社会保険に加入


②保険料分を社会保険適用促進手当などとして労働者に支給


③企業が労働者に支給した手当分を助成金として1人あたり最大50万円支援


④社会保険適用促進手当分の保険料は算定免除(保険料が安くなる)


⑤労働環境の整備と労働力確保ができる




事業主の証明による被扶養者認定の円滑化

「年収の壁」への対応策として、「事業主の証明による被扶養者認定の円滑化」も促進されることになりました。これは、130万円の壁への対応策となりますが、参考にご紹介いたします。


具体的には、一時的に年収が130万円以上となる場合には、人手不足による労働時間延長等に伴う一時的な収入変動である旨の事業主の証明を添付することで、迅速な被扶養者認定を可能とするというものです。


ただし、この認定はあくまでも「一時的な事情」として行われるため、同一の労働者については原則として連続2回までが上限となります。


この対応策の目的は、人手不足による労働時間の延長や一時的な収入変動によって、短時間労働者が年収の壁を意識せずに働ける環境を作ることです。年収の壁があると、短時間労働者は収入が上げることができず、働く意欲も低下してしまいます。


そのため、被扶養者認定の審査を迅速に行い、短時間労働者が安心して働ける環境を整えることが重要となります。





「年収の壁・支援強化パッケージ」を活用して「年収の壁」対策

この対応策によって、短時間労働者が自身の収入や生活に安定感を持つことができるだけでなく、企業側も人手不足を解消し、生産性の向上に繋げることが期待されます。


また、被扶養者認定の円滑化によって、事業主側も手続きの煩雑さを軽減することができ、効率的な人材活用が可能となります。


年収の壁への対応策は、社会全体の課題であり、政府や企業、労働者が協力して取り組む必要があります。今後も様々な対策が検討される予定ですが、短時間労働者の働き方改革や人手不足の解消に一歩近づくことが期待されます。


ただし、この支援策を有効活用し助成金を受給するには、適切な労務管理など法的な知識が不可欠です。労務管理や助成金などに関する疑問や不安がある場合には、専門家である社会保険労務士(社労士)への相談を検討しましょう。


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